「リリカは神経痛の薬ですよね?なぜ舌に効くんですか?」
「舌がヒリヒリするのに異常なしと言われた。」
「リリカ(プレガバリン)という薬を勧められたけれど、腰や手足の神経痛の薬ではないの?」
このような疑問を持つ方は少なくありません。
実は現在の舌痛症(バーニングマウスシンドローム)は、慢性疼痛という考え方で理解されることが増えています。痛みは一つの原因だけではなく、複数の神経の仕組みが関係しているため、それぞれ異なる場所に作用する薬を組み合わせて治療することがあります。プレガバリン(リリカ)も、その選択肢の一つです。
この記事では、
- なぜリリカが舌痛症に使われることがあるのか
- 慢性疼痛とはどのような病気なのか
- リリカはどこに作用する薬なのか
を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
この記事はこんな方におすすめです
- 舌がヒリヒリ・ピリピリ痛む
- 「異常なし」と言われたが症状が続く
- リリカを勧められた理由が分からない
- 神経の痛みについて知りたい
- 舌痛症の治療を理解したい
この記事の要点
- 舌痛症は慢性疼痛として考えられることが増えている
- 慢性疼痛では複数の痛みの経路が関係する
- リリカは神経の興奮を鎮める薬
- 一剤ですべて改善する病気ではない
- 患者さんごとに治療薬を組み合わせることが多い
慢性疼痛という考え方
以前は、舌痛症は「原因不明の舌の痛み」と説明されることが多くありました。
しかし現在では、舌痛症(バーニングマウスシンドローム)は慢性疼痛として理解されることが増えています。
慢性疼痛とは、
「傷が治っているはずなのに、痛みだけが長く続いてしまう状態」
を指します。国際疼痛学会(IASP)では、おおむね3か月以上続く痛みを慢性疼痛として扱っています。
そして現在では、
- 神経の過敏な反応
- 脳や脊髄での痛みの増幅
- 睡眠やストレスなど生活の影響
などが複雑に重なって痛みが続いていると考えられています。
つまり、
「痛みの原因が一つではない」
ということです。
この考え方を理解すると、
「なぜ薬が一種類ではないのか」
という疑問も自然と分かるようになります。
痛みの経路ごとに薬には役割があります
慢性疼痛では、一つの薬だけですべての痛みを取り除くことは難しい場合があります。
なぜなら、痛みは一つの場所で起こっているのではなく、複数の神経の経路を通って脳へ伝わるからです。
そのため、現在の慢性疼痛治療では、
「痛みの経路ごとに異なる薬を使い分ける」
という考え方が一般的になっています。
例えば、舌痛症では次のようなイメージです。
| 薬 | 主な作用点 | 役割 |
|---|---|---|
| クロナゼパム含嗽 | 局所のGABA受容体 | 舌の神経の興奮を局所で抑える |
| プレガバリン(リリカ) | α2δサブユニット | 神経の興奮を鎮める |
| メラトニン | 下行性疼痛抑制系など | 脳から痛みを抑える仕組みをサポートする可能性 |
| デュロキセチン | 下行性疼痛抑制系 | 脳から痛みを抑える働きを強める |
この表を見ると分かるように、それぞれの薬は同じことをしているわけではありません。
例えば、クロナゼパム含嗽は舌の神経そのものを落ち着かせることを目的とします。一方で、デュロキセチンは脳から痛みを抑える仕組みに作用し、プレガバリンはその中間にある神経の興奮を鎮めます。メラトニンも睡眠を整えるだけではなく、慢性疼痛に関わる仕組みに作用する可能性が研究されています。
つまり、
「どの痛みの経路が強く関与しているのか」
によって、選択される薬が変わるのです。
リリカ(プレガバリン)はどこに効くのでしょうか?
リリカは、「神経の興奮を鎮める薬」です。
痛みは、神経から神経へと電気信号のように伝わっていきます。
その途中では、多くの神経伝達物質が放出されることで、次の神経へ痛みの情報が伝えられます。
イメージすると、次のような流れです。
痛み刺激
↓
末梢神経
↓
カルシウムチャネル(α2δサブユニット)
↓
グルタミン酸・サブスタンスP・CGRP
↓
脊髄
↓
脳で「痛い」と感じる
プレガバリンは、このカルシウムチャネル(α2δサブユニット)に結合します。すると神経の中へカルシウムが入りにくくなり、グルタミン酸やサブスタンスPなどの興奮性神経伝達物質の放出が減少します。
その結果、
神経が痛みの信号を伝えすぎる状態を落ち着かせる
ことが期待できます。
リリカは舌そのものを治す薬ではありません。
神経が過敏になっている状態を和らげる薬であるため、神経障害性疼痛の要素が関わる慢性疼痛で広く使用されています。慢性疼痛治療ガイドラインでも、プレガバリンは神経障害性疼痛に対する第一選択薬の一つとして位置付けられています。
リリカが効く人と効きにくい人
ここで一つ大切なことがあります。
リリカは舌痛症の「特効薬」ではありません。
「この薬を飲めば誰でも治る」という薬ではなく、神経の過剰な興奮が痛みに関係している患者さんで効果が期待される治療薬です。
舌痛症は一つの病気ではなく、
- 神経の過敏性
- 脳での痛みの増幅
- 睡眠の質の低下
- 不安やストレス
- 生活リズムの乱れ
などが複雑に重なって症状が続いていることが多いためです。
そのため、
リリカだけで十分改善する方もいれば、他の薬との組み合わせが必要になる方もいます。
これは薬が効いていないというより、「痛みの経路が一つではない」ことを意味している場合があります。
リリカには副作用もあります
リリカは有効な薬ですが、副作用についても理解しておくことが大切です。
代表的なものは、
- 眠気
- めまい
- ふらつき
- むくみ
- 体重増加
などです。慢性疼痛治療ガイドラインでも、高齢者では特に注意し、少量から開始して徐々に増量することが推奨されています。
特に治療開始直後は眠気やふらつきが出やすいため、自動車の運転や高所での作業には注意が必要です。
自己判断で飲み始めたり中止したりする薬ではありません
プレガバリンは処方薬です。
症状だけを見て「舌が痛いからリリカ」と判断できる薬ではなく、
- 本当に舌痛症なのか
- 神経障害性疼痛の要素が強いのか
- 他の病気が隠れていないか
- 他の薬との飲み合わせは問題ないか
などを確認した上で使用することが望まれます。
また、急に自己判断で中止すると症状が悪化したり、離脱症状が現れたりすることもあるため、減量や中止は処方した医師と相談しながら進める必要があります。
当院では医師が薬物療法を担当しています
慢性疼痛に使用される薬剤は、それぞれ作用する場所も副作用も異なります。
そのため当院では、
舌痛症の薬物療法は医師が担当し、患者さん一人ひとりの症状や既往歴、現在服用している薬などを確認しながら治療方針を決定しています。
「舌が痛いから同じ薬を出す」という考え方ではなく、
どの痛みの経路が症状に関わっているのか
という視点から、必要に応じてプレガバリン、クロナゼパム含嗽、メラトニン、デュロキセチンなどを検討しています。
このように慢性疼痛全体を踏まえて薬を選択することが、現在の舌痛症治療では重要だと当院では考えています。
よくある質問(FAQ)
Q. リリカは舌痛症によく効きますか?
リリカは舌痛症の特効薬ではありません。
一方で、神経の過剰な興奮が痛みに関わっている患者さんでは改善が期待できることがあります。舌痛症は複数の仕組みが重なって起こる慢性疼痛であるため、リリカ単独ではなく、他の治療と組み合わせて使用されることも少なくありません。
Q. リリカはずっと飲み続ける薬ですか?
必ずしもそうではありません。
症状の改善に合わせて減量や中止を検討することもあります。ただし、自己判断で急に中止すると症状が悪化したり体調を崩したりすることがあるため、必ず処方した医師と相談しながら進めましょう。
Q. 舌が痛い場合は最初からリリカを飲めばよいのでしょうか?
おすすめできません。
舌の痛みには、口腔カンジダ症、鉄やビタミン不足、糖尿病、薬剤の副作用、口腔がんなど、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
まずはそれらを除外したうえで、舌痛症と診断された場合に薬物療法を検討します。
Q. ストレスだけが原因なのでしょうか?
いいえ。
ストレスが症状に影響することはありますが、それだけが原因ではありません。
現在では、神経の過敏性や脳の痛みを調節する仕組み、睡眠なども関与する慢性疼痛として理解されることが増えています。
今回取り上げた研究・ガイドライン
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象疾患 | 慢性疼痛、神経障害性疼痛、舌痛症(BMS) |
| 主な資料 | 慢性疼痛治療ガイドライン、IASP慢性疼痛分類、舌痛症関連研究 |
| 研究デザイン | 診療ガイドライン、システマティックレビュー、RCTなど |
| 主な結果 | プレガバリンは神経障害性疼痛で高いエビデンスを持つ第一選択薬の一つ |
| 限界 | 舌痛症に特化した質の高い研究はまだ限られている |
受診の目安
舌のヒリヒリが続く場合は、
まずは
- 歯科
- 口腔外科
- 耳鼻咽喉科
などで診察を受け、舌の病気や全身疾患が隠れていないかを確認することが大切です。
特に、
- 潰瘍が治らない
- 出血する
- しこりがある
- 体重減少を伴う
などの症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
一方で、
- 「異常なし」と言われた
- 数か月以上ヒリヒリが続く
- 睡眠やストレスで悪化する
- 複数の医療機関を受診しても改善しない
といった場合は、慢性疼痛としての評価や治療が必要になることがあります。
当院の考え方
当院では、舌痛症を慢性疼痛の一つとして捉えています。
そのため、「この薬が効く」という発想ではなく、
- 局所の神経の過敏性
- 神経の興奮
- 脳での痛みの調節機能
- 睡眠や生活習慣
など、どの経路が症状に関わっているのかを考えながら治療方針を組み立てています。
薬物療法についても、医師が診察を行い、症状や既往歴、現在服用されている薬との飲み合わせなどを確認したうえで処方しています。
プレガバリンは有力な治療選択肢の一つですが、患者さんによってはクロナゼパム含嗽やデュロキセチン、睡眠へのアプローチなどを組み合わせた方が改善しやすい場合もあります。
一人ひとりで痛みの仕組みは異なるため、その方に合った治療を一緒に考えていくことを大切にしています。
まとめ
- 舌痛症は慢性疼痛として考えられることが増えています。
- リリカは神経の過剰な興奮を鎮める薬です。
- 舌痛症の特効薬ではありませんが、神経障害性疼痛の要素がある場合には治療選択肢になります。
- 舌痛症では複数の痛みの経路が関わるため、薬を組み合わせて治療することがあります。
- まずは原因となる病気を除外し、そのうえで専門的な評価を受けることが大切です。
バーニングマウスシンドロームでお悩みの方へ
「異常なしと言われたのに、舌のヒリヒリだけが続く。」
そのような状態が続くと、「このまま治らないのでは」と不安になる方も少なくありません。
舌痛症は、現在では慢性疼痛として理解されることが増え、以前よりも治療の選択肢は広がっています。
当院では、初回無料オンライン相談を行っています。
「自分の症状は舌痛症なのか」「専門外来を受診した方がよいのか」と迷われている方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 慢性疼痛治療ガイドライン慢性疼痛治療ガイドライン作成ワーキンググループ 編.
真興交易医書出版部, 2018.
(CQ1 慢性疼痛の定義、CQ2 慢性疼痛の分類、CQ11 プレガバリン、CQ13 デュロキセチン、CQ14 アミトリプチリン) - Treede RD, Rief W, Barke A, et al.A classification of chronic pain for ICD-11.Pain.2015;156(6):1003-1007.DOI:10.1097/j.pain.0000000000000160
- Zborowski J, Konopka T.Comparison of Clonazepam and Tongue Protector in the Treatment of Burning Mouth Syndrome.Int J Environ Res Public Health.2022;19:8999.DOI:10.3390/ijerph19158999
- de Zanette SA, Vercelino R, Laste G, et al.Melatonin analgesia is associated with improvement of the descending endogenous pain-modulating system in fibromyalgia.BMC Pharmacology and Toxicology.2014;15:40.
- PRECISE Trial – Pain Relief Combination Intervention StratEgiesClinical trial of melatonin-pregabalin combination therapy for fibromyalgia.ISRCTN18278231.




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