「異常なし」と言われたのに舌がヒリヒリする…
「舌がヒリヒリするのに検査では異常がないと言われた」
「食事のたびに痛い」
「夜になるほど気になって眠れない」
このような悩みを抱えている方は少なくありません。
舌のヒリヒリが続く状態は、**口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)**と呼ばれることがあります。
最近では、このような痛みは「舌だけ」の問題ではなく、睡眠や脳の痛みの感じ方とも深く関係している可能性が分かってきました。
この記事では、慢性疼痛の最新研究をもとに、
- なぜ眠れないほど舌が気になるのか
- 睡眠が痛みに影響する理由
- 睡眠を整えることが痛みの改善につながる可能性
について分かりやすく解説します。
よくある質問
Q. ストレスだけが原因ですか?
ストレスだけが原因とは言えません。
神経の働きや睡眠、生活習慣など複数の要因が関係していると考えられています。
Q. 異常なしと言われました。本当に病気ではないのでしょうか?
見た目に異常がなくても痛みを感じる病気は存在します。
「異常が見えない」と「痛みが存在しない」は同じ意味ではありません。
Q. 夜になると痛みが強くなるのは気のせいですか?
気のせいとは言えません。
睡眠不足や疲労は痛みを強く感じる一因になる可能性があります。
Q. 眠れないと舌の痛みは悪化しますか?
舌の痛みを含む慢性疼痛では睡眠不足と痛みはお互いに影響し合うことが知られています。
舌痛症でも同じ仕組みが関係している可能性があります。
Q. 睡眠薬で舌の痛みが治るのですか?
現時点ではそのように断定することはできません。
しかし慢性疼痛では、不眠への治療によって痛みも改善した研究が報告されています。
今回取り上げた研究
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象疾患 | 慢性疼痛・関節リウマチ・慢性腰痛 |
| 対象人数 | 約6,500人の慢性疼痛患者+RCT2試験 |
| 研究デザイン | コホート研究・ランダム化比較試験 |
| 主な結果 | 不眠は痛みと関連し、睡眠改善で痛みも改善する可能性 |
| 限界 | 舌痛症だけを対象にした研究ではない |
この記事の要点
- 舌痛症は慢性疼痛として考えられる
- 睡眠不足は痛みを強める可能性がある
- 「治らないかもしれない」という考えが痛みを増幅することがある
- 慢性疼痛では睡眠治療で痛みも改善した研究がある
- 睡眠も診療の対象になることがある
この記事はこんな方に向けています
- 舌がヒリヒリする
- 夜になると痛みが気になる
- 眠れない
- 異常なしと言われた
- 痛みの原因を知りたい
舌がヒリヒリするのに異常がないと言われる理由
舌痛症では、多くの患者さんで舌に潰瘍や傷、腫瘍などの明らかな異常は見つかりません。
そのため、
「異常ありません。」
と言われることがあります。
しかし、これは
「痛みが存在しない」
という意味ではありません。
頭痛や神経痛のように、見た目に異常がなくても強い痛みを感じる病気は数多くあります。
舌痛症もその一つと考えられています。
近年では国際疼痛学会(IASP)のICD-11分類でも、口腔灼熱症候群(BMS)は慢性口腔顔面痛として位置づけられています。
つまり、
舌だけの病気ではなく、「慢性的な痛み」として考えることが大切なのです。
慢性疼痛では睡眠も重要な症状です
慢性疼痛というと、
- 腰痛
- 関節痛
- 神経痛
を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし慢性疼痛では、
- 眠れない
- 食欲が落ちる
- 気分が沈む
- 日中に活動できない
といった症状を伴うことが少なくありません。
厚生労働省の慢性疼痛治療ガイドラインでも、
慢性疼痛では
- 睡眠障害
- 不安
- 破局的思考
- 生活機能の低下
を合わせて評価することが重要とされています。
つまり、
眠れないこと自体も慢性疼痛の一部として考えられているのです。
「痛みが治らないかもしれない」と考える時間が増える
眠れない夜は、
どうしても舌のことばかり考えてしまいます。
例えば、
「また今日も痛い」
「このまま一生治らないのかな」
「重大な病気ではないのかな」
そんな考えが何時間も頭の中を回ることがあります。
慢性疼痛では、このように
痛みに意識が集中し続ける状態
を**破局的思考(Pain Catastrophizing)**と呼びます。
「破局」と聞くと大げさに聞こえるかもしれませんが、
簡単に言えば
痛みに対して最悪の未来を想像し続けてしまう状態
です。
もちろん患者さんが悪いわけではありません。
強い痛みが続けば、多くの人が自然にそう考えてしまいます。
最新研究で分かってきたこと
2023年、6,497人の慢性疼痛患者を対象とした大規模研究が報告されました。
この研究では、
「眠れないこと」
が
「痛み」
にどう影響するのかを解析しています。
その結果、
不眠は直接痛みに影響するだけでなく、
「痛みへの不安や悲観的な考え(破局的思考)」を介して、さらに痛みを強めている
ことが示されました。
つまり、
眠れない
↓
痛みばかり考える
↓
さらに痛みを強く感じる
という悪循環が起こる可能性があるのです。
研究では、この「破局的思考」が、不眠と痛みをつなぐ重要な役割を果たしていました。
睡眠は「休む時間」以上の意味があります
睡眠は疲れを取るだけではありません。
睡眠中には、
脳や神経がその日の情報を整理し、
身体の修復や回復も行われています。
そのため睡眠不足になると、
神経が刺激に敏感になり、
同じ刺激でも以前より痛く感じる可能性があります。
もちろん、
「眠れないことが舌痛症の原因です」
とはまだ言えません。
しかし、
慢性疼痛では
睡眠も痛みを左右する重要な要素
として考えられるようになっています。
睡眠を整えることは舌の痛みの改善につながるのでしょうか?
ここまでご紹介したように、慢性疼痛では
- 不眠
- 痛み
- 不安
- 「治らないかもしれない」という考え
がお互いに影響し合っていることが分かってきました。
では、
睡眠を改善すると痛みも軽くなるのでしょうか。
この疑問について、慢性疼痛を対象とした研究をご紹介します。
睡眠を治療すると痛みも改善した研究があります
関節リウマチを対象とした研究
関節リウマチと不眠症を合併した患者さん153人を対象に、
睡眠薬のエスゾピクロンを4週間使用した研究があります。
その結果、
- 寝つきが改善した
- 夜中に起きる回数が減った
- 睡眠時間が延びた
- 日中の活動性が改善した
だけではなく、
痛みの程度や生活の質(QOL)の一部にも改善が認められました。
つまり、
睡眠だけではなく、
痛みも一緒に改善した可能性
が示されたのです。
慢性腰痛を対象とした研究
さらに興味深い研究があります。
慢性腰痛と不眠症を合併した患者さんを対象に、
- 腰痛治療のみ
- 腰痛治療+エスゾピクロン
を比較した研究です。
その結果、
睡眠治療を追加した患者さんでは、
- 睡眠時間の改善
- 痛みの軽減
- 抑うつ症状の改善
が認められました。
さらに重要なのは、
睡眠が改善した患者さんほど、痛みも改善する傾向
がみられたことです。
研究者は、
睡眠への治療が痛みの改善に寄与している可能性がある
と考察しています。
この研究で分かっていないこと
ここで大切なのは、
舌痛症で同じ効果が証明されたわけではない
ということです。
今回紹介した研究は、
- 関節リウマチ
- 慢性腰痛
を対象にしています。
そのため、
舌痛症でも必ず同じ結果になる
とはまだ言えません。
しかし、
舌痛症は慢性疼痛の一つとして考えられており、
慢性疼痛で得られた知見は参考になる可能性があります。
現在のところ、
睡眠への介入が舌痛症にも役立つかどうかは、今後さらに研究が必要な段階
です。
よくある誤解
「異常なし=気のせい」ではありません
見た目に異常がなくても痛みは存在します。
慢性疼痛では、脳や神経の働きが痛みに関係していることがあります。
「精神的な問題だけ」ではありません
不安やストレスは痛みに影響します。
しかし、
それだけが原因とは考えられていません。
神経・睡眠・生活習慣など複数の要因が重なっていることが多い病気です。
「一生治らない」と決まっているわけではありません
舌痛症は改善する方も少なくありません。
症状に合わせて治療方法を見直していくことが大切です。
受診の目安
舌のヒリヒリが続く場合には、
まず口腔内に病気がないか確認することが重要です。
以下のような場合には歯科・口腔外科などへの受診をおすすめします。
- 2〜3週間以上ヒリヒリが続く
- 食事や会話に支障がある
- 夜眠れないほど気になる
- 他院で異常なしと言われたが改善しない
一方で、
- 舌にしこりがある
- 出血が続く
- 急速に悪化する
などの場合は、別の病気が隠れている可能性もあるため、早めの受診が必要です。
症状が長く続いているものの外出が難しい方や、まず相談したい方には、オンライン診療が適している場合もあります。
当院での考え方
舌痛症では、
「舌だけを見る」
だけでは十分でないことがあります。
実際の診療では、
- 痛みの経過
- 食事との関係
- 睡眠状態
- 服用中のお薬
- 不安や生活への影響
などを総合的に確認しています。
特に、
「夜眠れない」
「眠れても疲れが取れない」
という訴えは珍しくありません。
慢性疼痛の研究を踏まえると、
睡眠状態を確認することは、
痛みを理解するうえで大切な情報になると考えています。
もちろん、
睡眠だけで舌痛症が改善するとは言えません。
しかし、
痛みだけでなく、
患者さんの生活全体を整えることが、
結果として症状の改善につながることもあります。
まとめ
- 舌痛症は慢性疼痛として考えられています
- 慢性疼痛では睡眠不足が痛みに影響する可能性があります
- 「治らないかもしれない」という考えが痛みを強めることがあります
- 慢性疼痛では睡眠治療で痛みも改善した研究があります
- 舌痛症でも睡眠を含めた評価が重要になる可能性があります
舌痛症・バーニングマウスシンドロームでお悩みの方へ
舌の痛みが続くと、
「このまま治らないのでは」
という不安を抱えてしまう方は少なくありません。
しかし、
舌痛症は決して「気のせい」ではなく、
近年では慢性疼痛として研究が進んでいる病気です。
当院では舌だけではなく、
睡眠や生活への影響も含めて症状を丁寧に伺っています。
まずは現在の症状について、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Treede RD, et al. A classification of chronic pain for ICD-11. Pain. 2015;156:1003-1007.
- Gerdle B, et al. Chronic pain, insomnia and pain catastrophizing: cohort study. 2023.
- Roth T, et al. The Effect of Eszopiclone in Patients with Insomnia and Coexisting Rheumatoid Arthritis: A Pilot Study. Prim Care Companion J Clin Psychiatry. 2009.
- Goforth HW, et al. A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial of Eszopiclone for the Treatment of Insomnia in Patients with Chronic Low Back Pain. Sleep. 2014.
- 慢性疼痛治療ガイドライン(厚生労働行政推進調査事業・2018)




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