「舌がヒリヒリして眠れない」
「夜になると痛みが強くなる」
「口の中に異常はないと言われたのに痛い」
このような症状で悩んでいる方は少なくありません。
舌のヒリヒリが続く病気の一つに**バーニングマウス症候群(BMS)**があります。
最近では、この病気は単なる口の病気ではなく、「慢性的な痛み」の一つとして考えられるようになっています。さらに、多くの患者さんが睡眠の質の低下を抱えていることも分かってきました。
一方で、「睡眠を改善すれば舌の痛みも必ず治る」とまでは、現在の研究では証明されていません。
しかし、慢性的な痛みでは睡眠と痛みがお互いに影響し合うことが知られており、睡眠を整えることは痛みの治療を支える大切な要素と考えられています。
この記事では、
- なぜ舌の痛みと睡眠が関係するのか
- 最近の研究で分かっていること
- 当院が痛みと睡眠を同時に考える理由
を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。
この記事の要点
- バーニングマウス症候群は慢性疼痛の一つです。
- 約8割の患者さんで睡眠の質の低下がみられます。
- 睡眠不足と痛みはお互いに影響し合う可能性があります。
- 睡眠だけを治療しても痛みが改善するとは限りません。
- 痛みと睡眠を一緒に評価・治療することが大切です。
このような方におすすめです
- 舌がヒリヒリして眠れない
- 夜になると舌が痛くなる
- 病院では異常なしと言われた
- 睡眠薬を飲んでも舌が痛い
- 舌痛症と診断された
舌痛症(バーニングマウス症候群)とは?
舌痛症は、見た目には異常がないにもかかわらず、舌や口の中にヒリヒリ・ピリピリした痛みが続く病気です。
近年では、国際的に**バーニングマウス症候群(Burning Mouth Syndrome:BMS)**という名称が使われることが多く、日本でも徐々に広まっています。
代表的な症状には次のようなものがあります。
- 舌の先や縁がヒリヒリする
- 焼けるような痛みが続く
- ピリピリ・しびれるような違和感がある
- 朝より夕方から夜にかけて痛みが強くなる
- 口の中を調べても大きな異常が見つからない
「異常なし」と言われても、痛みが存在しないという意味ではありません。
現在では、バーニングマウス症候群は慢性疼痛(長く続く痛み)の一つとして考えられており、口の中だけではなく、神経の働きや睡眠、不安なども含めて評価することが重要とされています。
舌の痛みと眠れない症状は関係があるのでしょうか?
あります。
ただし、「睡眠不足が舌痛症の原因」と証明されたわけではありません。
現在の研究では、
- 舌の痛みが眠れなくする
- 睡眠不足が痛みを感じやすくする
この両方が起こる可能性があると考えられています。
そのため、痛みだけを診るのではなく、睡眠の状態も確認することが重要です。
バーニングマウス症候群は「慢性的な痛み」に分類されます
以前は「口の中だけの病気」と考えられることも多かったのですが、現在は国際疼痛学会(IASP)が提唱した慢性疼痛分類では、バーニングマウス症候群は慢性口腔顔面痛として位置づけられています。
また、日本の慢性疼痛治療ガイドラインでも、慢性口腔顔面痛は慢性疼痛の分類の一つとして扱われています。
つまり、
舌だけを診る病気ではなく、「慢性的な痛み」として全身的に考えることが重要なのです。
バーニングマウス症候群では睡眠障害が多くみられます
イタリア10施設、200人のバーニングマウス症候群患者さんを対象とした研究では、
- 約79%に睡眠障害
- 不安・抑うつとも関連
- 健康な人より睡眠の質が悪い
ことが報告されました。
つまり、
「舌が痛い」
だけではなく、
「眠れない」
という悩みを同時に抱えている患者さんが非常に多いことが分かっています。
睡眠薬だけでは舌の痛みは治るのでしょうか?
現在の研究では、
そこまでは分かっていません。
慢性頭痛と不眠症を併せ持つ患者さんに、睡眠薬であるダリドレキサント(商品名:クービビック)を使用した研究では、
- 睡眠は改善した
- 頭痛は大きく改善しなかった
という結果でした。
つまり、
睡眠だけを治療すれば痛みも改善する
とは、現時点では言えません。
一方で、睡眠を改善すること自体は、慢性疼痛の管理に重要であることは多くの研究で支持されています。
よくある誤解
異常なし=異常がない、ではありません
舌に傷や炎症が見つからなくても、慢性的な痛みが存在することがあります。
精神的な問題だけの病気ではありません
不安や睡眠は関係しますが、「気のせい」という意味ではありません。
睡眠薬だけで治る病気ではありません
睡眠は大切ですが、痛みへの治療も同時に必要です。
当院で大切にしている考え方
診療をしていると、
「舌が痛いので受診したのに、実は何年もぐっすり眠れていない」
という患者さんは少なくありません。
また、
痛みが続くことで眠れなくなり、
眠れないことで翌日の痛みがさらに気になる、
という悪循環に入っている方も多くみられます。
そのため当院では、
- 痛みに対する治療
- 睡眠状態の確認
- 必要に応じた不眠症の薬物療法
を並行して考えています。
これは、
「睡眠薬で舌痛症を治す」
という考え方ではありません。
慢性的な痛みを支える土台として睡眠を整えることも大切である
という考え方です。
まとめ
- バーニングマウス症候群は慢性疼痛の一つです。
- 多くの患者さんで睡眠障害がみられます。
- 睡眠と痛みはお互いに影響し合うと考えられています。
- 睡眠だけでは痛みが改善するとは証明されていません。
- 痛みと睡眠を一緒に考えることが大切です。
バーニングマウス症候群でお悩みの方へ
舌の痛みが長く続くと、
「このまま一生治らないのでは」
と不安になる方も少なくありません。
しかし、舌だけを見るのではなく、睡眠や生活全体を含めて評価することで、治療の糸口が見つかることもあります。
当院では、舌の痛みだけでなく、睡眠や生活の困りごとも含めて一緒に考えています。
気になる症状がある方は、お気軽に初回相談をご利用ください。
参考文献
- Treede RD, et al. A classification of chronic pain for ICD-11. Pain. 2015.
- Adamo D, et al. The association between burning mouth syndrome and sleep disturbance. Oral Diseases.
- González-Quintanilla V, et al. Daridorexant in patients with primary headaches and chronic insomnia. Cephalalgia Reports.
- 慢性疼痛治療ガイドライン(2018)




コメント