「異常なしと言われたのに、舌や口が焼けるように痛い」「抗うつ薬を勧められたけれど、精神的な病気なのかと不安」と感じていませんか。
結論からいうと、トリンテリックスには有望な研究結果がありますが、すべての方に最も効くと証明された薬ではありません。BMSはICD-11で慢性疼痛の枠組みに位置づけられており、痛みだけでなく、睡眠、不安、食事、会話、生活への影響をまとめて考えることが大切です。
よくある質問
異常なしと言われたのに、なぜ痛いのですか?
検査で見える傷がなくても、痛みを感じる神経の働きが変化している可能性があります。まずは、ほかの病気が隠れていないか確認することが重要です。
うつ病でなくても抗うつ薬を飲むのですか?
はい。抗うつ薬は、うつ病だけでなく、慢性疼痛の痛みを調整する目的で使われることがあります。
トリンテリックスは他の抗うつ薬より効きますか?
早めに改善した人が多く、副作用が少なかった研究があります。ただし、52週後の治療反応率には明確な差がありませんでした。
どのくらいで効果が出ますか?
数週間から数か月かけて評価することが一般的です。早い段階で変化する方もいますが、短期間で効かないと決めつけることはできません。
精神科に行くべきですか?
必ずしも精神科だけを受診する必要はありません。口腔顔面痛を扱う歯科、口腔外科、ペインクリニックなどで相談し、必要に応じて精神科や心療内科と連携します。
今回取り上げた研究の要約
| 項目 | 2021年の比較研究 | 2025年の追加治療研究 |
|---|---|---|
| 対象疾患 | バーニングマウスシンドローム | 抗うつ薬だけでは改善が不十分だったBMS |
| 対象人数 | 150人 | 203人 |
| 研究デザイン | 5種類の抗うつ薬を比較した、無作為化・非盲検試験 | トリンテリックス群とSSRI・SNRI群の両方にプレガバリンを追加した、52週間の無作為化・非盲検試験 |
| 比較した治療 | トリンテリックス、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム、デュロキセチン | トリンテリックス+プレガバリン、またはSSRI・SNRI+プレガバリン |
| 主な結果 | すべての抗うつ薬で痛みなどが改善。トリンテリックス群では効果が早く、副作用が少ない傾向 | 52週後の反応率は61.8%対58.2%で明確な差なし。早期反応と副作用率ではトリンテリックス群が良好 |
| 限界 | 薬を隠していない、1施設、プラセボなし | 薬を隠していない、複数のSSRI・SNRIを一つの群として解析 |
2021年研究では150人を5群に分け、12か月間治療しました。2025年研究では、抗うつ薬だけで十分に改善しなかった203人にプレガバリンを追加しています。どちらも患者と医療者が使用薬を知っている研究であるため、結果は慎重に受け止める必要があります。
この記事の要点
- BMSは慢性疼痛として治療を考える
- 抗うつ薬は痛みの調整にも使われる
- トリンテリックスは早期効果が期待される
- 長期の反応率は他薬と大差がなかった
- 薬は症状と副作用を見ながら選ぶ
この記事はこんな方に向けています
- 舌がヒリヒリ、ピリピリする
- 口の中が焼けるように痛い
- 口の乾きや味覚の変化がある
- 検査で「異常なし」と言われた
- トリンテリックスを勧められた
- デュロキセチンなどとの違いを知りたい
- 抗うつ薬を飲むことに抵抗がある
- 痛みで食事や睡眠に支障が出ている
舌や口がヒリヒリするBMSとは
バーニングマウスシンドロームは、舌、唇、歯ぐき、上あご、頬の内側などに、焼けるような痛みやヒリヒリ感が続く状態です。
医学論文では、主に次のような状態として説明されています。
- 口の中の灼熱感や不快な感覚がある
- 1日2時間以上、症状が続く
- 3か月を超えて繰り返す
- 診察や検査で、症状を十分に説明できる傷や病気が見つからない
舌の両側に症状が出ることが多く、味覚の変化、口の乾き、唾液が多い感じ、かゆみ、ざらつき、しびれ、口臭が気になるといった症状を伴う場合もあります。
痛みは朝よりも午後や夕方に強くなったり、食事中には一時的に軽くなったりすることがあります。ただし、症状の出方には個人差があります。
「異常なし」と言われる理由
BMSでは、痛い場所を見ても、赤み、潰瘍、腫れなどが確認できないことがあります。血液検査にも、はっきりした異常が出ないことがあります。
そのため、「異常がない」「気のせい」と受け取られやすいのですが、これは正確ではありません。
見た目に傷がないことと、痛みが存在しないことは別です。慢性疼痛では、痛みを伝えたり弱めたりする神経の働きが変化し、はっきりした組織の傷が見えなくても痛みが続くことがあります。
一方で、BMSと判断する前には、口腔粘膜の病気、感染症、薬の影響、全身状態など、別の原因を確認する必要があります。「検査は何もいらない」という意味ではありません。
BMSを慢性疼痛として考える理由
ICD-11の慢性疼痛分類では、慢性疼痛は大きく7つに分けられています。その一つが「慢性頭痛および口腔顔面痛」です。
バーニングマウスシンドロームは、この慢性口腔顔面痛の枠組みで扱われ、さらに一次性慢性疼痛や神経障害性疼痛とも関連づけられています。これは、一つの病名が複数の分類に関係する「複数の親を持つ分類」という考え方です。
つまり、BMSは単に「舌の表面に何かが起きている病気」としてだけでなく、長く続く痛みそのものを治療する必要がある状態として捉えられています。
ただし、BMSが慢性疼痛に分類されているからといって、すべての慢性疼痛治療薬がBMSに効くわけではありません。
慢性疼痛の治療方針を参考にしながら、BMSを対象にした研究、患者さんの症状、年齢、ほかに飲んでいる薬、副作用の出やすさを考えて治療を選ぶ必要があります。
よくある誤解
異常なし=何も起きていない、ではありません
診察や検査で異常が見つからない場合でも、痛みは実際に存在します。
慢性疼痛は、画像や血液検査だけでは評価できません。痛みの強さ、時間帯による変化、食事との関係、睡眠、活動量などを詳しく確認することが重要です。
精神的な問題だけの病気ではありません
不安や気分の落ち込みがあると、BMSの痛みが強く感じられることがあります。反対に、痛みが何か月も続くことで不安が強まり、眠れなくなり、気分が落ち込むこともあります。
どちらが最初の原因かを、すべての患者さんで一つに決めることはできません。慢性疼痛治療ガイドラインでも、痛みが抑うつを起こすのか、抑うつが痛みに関係するのかについて、結論は出ていないとされています。
抗うつ薬を飲む=うつ病、ではありません
抗うつ薬には、気分だけでなく、脳や神経が痛みを強めたり弱めたりする働きを調整する作用があります。
そのため、うつ病と診断されていない人にも、慢性疼痛の治療として抗うつ薬が検討されることがあります。
一生治らないと決まった病気ではありません
BMSは治療に時間がかかることがありますが、研究では症状が軽くなった人や、生活への支障が改善した人が報告されています。
ただし、「この薬を飲めば必ず治る」「何か月で完全に消える」と断定することはできません。治療の目標は、痛みの程度だけでなく、食事、会話、睡眠、外出などを少しずつ取り戻すことです。
慢性疼痛で抗うつ薬が使われる理由
体には、痛みの信号を弱める仕組みがあります。ところが、痛みが長く続くと、この調整がうまく働かなくなり、刺激に敏感になることがあります。
一部の抗うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリンなど、痛みの調整に関わる物質に働きかけます。
慢性疼痛治療ガイドラインでは、抗うつ薬として主に次の薬が取り上げられています。
- デュロキセチン
- アミトリプチリン
- パロキセチンなどのSSRI
- ベンラファキシンなどのSNRI
- ノルトリプチリン
- ミルタザピン
- トラゾドン
このうち、デュロキセチンは神経障害性疼痛、慢性腰痛、変形性関節症、線維筋痛症などで比較的多くの研究があります。ただし、口腔顔面痛についての推奨は強くありません。
アミトリプチリンについては、ガイドラインに「特発性歯痛とBMSの治療薬として有効」と記載されています。一方、BMSの研究ごとに患者数や診断基準が異なり、今後の検討が必要ともされています。
アミトリプチリンとデュロキセチン以外の抗うつ薬は、慢性疼痛全体では質の高い研究が少なく、標準的な治療で十分な効果がなかった場合の選択肢とされています。
トリンテリックスと主な抗うつ薬の違い
| 薬・分類 | BMSや慢性疼痛での位置づけ | 注意したいこと |
|---|---|---|
| トリンテリックス(ボルチオキセチン) | BMS患者を対象に、ほかの抗うつ薬と比較した研究がある | 吐き気など。BMSに最も効くと確定したわけではない |
| デュロキセチン | 一般的な慢性疼痛では比較的研究が多い。BMS比較研究にも含まれる | 吐き気、口の乾き、眠気、めまいなど |
| パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム | BMS比較研究で痛みなどの改善が報告されている | 体重、性機能、消化器症状などを確認する |
| アミトリプチリン、ノルトリプチリン | ガイドラインでBMSへの有効性が記載されている | 口の乾き、便秘、眠気、ふらつきに注意 |
| プレガバリン | 抗うつ薬とは別の薬。神経障害性疼痛で使われ、BMSでは追加治療が研究された | 眠気、めまい、体重増加、むくみなど |
この表は「どの薬が一番良いか」を示すものではありません。同じ薬でも、効果や副作用は患者さんによって異なります。
特にBMSでは、もともと口の乾きを訴える方が少なくありません。そのため、口渇が出やすい薬が生活に与える影響も考える必要があります。
研究で分かったこと
2021年:トリンテリックスと4種類の抗うつ薬を比較
2021年の研究では、BMS患者150人が次の5群に分けられました。
- トリンテリックス
- パロキセチン
- セルトラリン
- エスシタロプラム
- デュロキセチン
各群30人で、12か月間治療が行われました。患者さんはそれまで抗うつ薬による治療を受けておらず、口腔内に症状を説明する明らかな病変がないことなどが確認されていました。
研究では、すべての薬で、長期的に痛み、不安、気分の落ち込みなどの評価が改善しました。
トリンテリックス群では、研究で定めた総合的な判定による「治療反応」が6か月時点で29人、96.6%、「寛解」が12か月時点で25人、83.3%と報告されています。
ただし、この数字は「痛みが完全に消えた人の割合」と同じではありません。
この研究の治療反応や寛解は、口の痛みだけでなく、不安、気分、全体的な改善度、副作用も含めて判定されています。また、薬を中止した後も症状が戻らなかったことを示す数字ではありません。
2021年研究で報告された副作用
この研究では、重い副作用は報告されませんでした。
トリンテリックス群では30人中3人、10%に吐き気が報告されました。2人では時間とともに軽くなり、1人は耐えにくい吐き気のため、6か月後に治療中止を希望しました。
研究内では、パロキセチン群で体重増加や性機能への影響、エスシタロプラム群で腹痛や心電図の変化などが報告されています。
ただし、各群は30人だけです。この副作用の割合を、そのまますべての患者さんに当てはめることはできません。
2025年:効かなかった人にプレガバリンを追加
2025年の研究では、最初に抗うつ薬を12週間使用しても十分な反応がなかったBMS患者203人が対象となりました。
内訳は次のとおりです。
- トリンテリックス群:136人
- SSRI・SNRI群:67人
両群にプレガバリンが追加され、52週間にわたって経過が評価されました。
52週後に研究上の治療反応を示した割合は、トリンテリックス+プレガバリン群で61.8%、SSRI・SNRI+プレガバリン群で58.2%でした。最終的な治療反応率には、統計的に明確な差はありませんでした。
一方、早い時期の反応率は、トリンテリックス群で44.8%、SSRI・SNRI群で22.4%でした。トリンテリックス群のほうが早い段階で反応した人が多い結果です。
副作用が報告された割合は、トリンテリックス+プレガバリン群で8.8%、SSRI・SNRI+プレガバリン群で20.8%でした。
両群で吐き気、便秘、めまい、眠気などがみられました。SSRI・SNRI群では、口の乾き、心電図の変化、プロラクチン値の上昇、性機能への影響なども報告されています。
【論文で示された内容】
今回の研究から、次のことが示されています。
第一に、トリンテリックスだけでなく、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム、デュロキセチンでも、BMSの痛みや関連症状が改善した患者さんがいました。
第二に、トリンテリックスは、ほかの抗うつ薬より早い段階で変化がみられた可能性があります。
第三に、今回の研究内では、トリンテリックス群で報告された副作用が比較的少ない結果でした。
第四に、抗うつ薬だけで改善が不十分だった患者さんにプレガバリンを追加する治療は、選択肢になる可能性があります。
第五に、2025年研究では、52週後の治療反応率についてトリンテリックス群とほかの抗うつ薬群に明確な差はありませんでした。
【この研究で分からないこと】
トリンテリックスが必ず一番効くか
分かりません。
2021年研究ではトリンテリックスの良好な結果が示されましたが、薬を患者や医療者に隠していない試験で、プラセボ群もありませんでした。研究は一つの専門施設で行われています。
研究者自身も、治療への期待、医療者との関係、自然な症状変化など、薬以外の影響を除外できないとしています。
改善が薬だけによるものか
断定できません。
2025年研究では、すべての患者さんにプレガバリンが追加されています。そのため、改善が抗うつ薬によるものなのか、プレガバリンによるものなのか、治療を長く続けた影響なのかを完全には分けられません。
個別のSSRIやSNRIとの細かな違い
十分には分かりません。
2025年研究の比較群には、パロキセチン、セルトラリン、シタロプラム、エスシタロプラム、デュロキセチンが含まれています。しかし、これらをまとめて一つの群として解析しているため、個々の薬との正確な比較には限界があります。
2025年研究も非盲検であり、研究者は今後、薬を隠して行う試験や、客観的な指標を用いた研究が必要だとしています。
誰に効くかを事前に予測できるか
まだ難しい状況です。
年齢、生活習慣、運動、ほかの薬などと治療反応の関係も調べられましたが、現時点で日常診療にそのまま使える予測方法が確立したわけではありません。
薬をやめた後も効果が続くか
今回の研究だけでは十分に判断できません。
治療終了後の再発率や、薬を減らした後の経過については、さらに長期の研究が必要です。
結局、どの抗うつ薬が一番効くのですか?
現時点では、「BMSにはこの薬が必ず一番効く」とは言えません。
2021年研究ではトリンテリックスが良好な結果を示しました。しかし、2025年研究では、52週後の反応率について他の抗うつ薬群との明確な差はありませんでした。
そのため、トリンテリックスの特徴は、少なくとも今回の研究では次のように整理できます。
- 比較的早い時期に変化がみられた
- 副作用の報告が少なかった
- 長期の反応率は他の抗うつ薬群と大きく変わらなかった
- すべての人が反応したわけではない
薬を選ぶときは、痛みの強さだけでなく、口の乾き、眠れない、食欲、体重、めまい、ふらつき、性機能への影響、心臓や肝臓の状態、ほかに飲んでいる薬なども考えます。
プレガバリンを追加する意味
プレガバリンは抗うつ薬ではなく、神経から出る痛みの信号を抑える目的で使われる薬です。
慢性疼痛治療ガイドラインでは、神経障害性疼痛に対する第一選択薬の一つとして位置づけられています。一方、頭痛・口腔顔面痛に関する質の高い研究は少なく、推奨度は高くありません。眠気やふらつきが起こることがあるため、特に高齢者では慎重な使用が必要です。
2025年研究は、「抗うつ薬だけでは十分に改善しなかったときに、別の仕組みの薬を追加する」という慢性疼痛治療の考え方をBMSに応用したものです。
ただし、最初から全員に2種類の薬が必要という意味ではありません。まず一つの薬を慎重に評価し、効果と副作用のバランスを見たうえで、追加や変更を検討します。
症状と睡眠・不安・生活の関係
BMSでは、痛みだけでなく、睡眠や気分にも目を向けることが大切です。
2021年の比較研究では、参加者150人のうち79人、52.6%に睡眠の問題が確認されました。また、痛み、不安、気分の落ち込みが日常生活に大きく影響していたと報告されています。
痛みが続くと、次のような流れが起こることがあります。
痛みが気になる
↓
眠りが浅くなる
↓
疲れや不安が強くなる
↓
痛みに注意が向きやすくなる
↓
食事や外出を避ける
↓
生活の楽しみが減る
↓
さらに痛みがつらく感じられる
これは「精神的な問題が痛みを作っている」という意味ではありません。痛み、睡眠、不安、行動が互いに影響し合うということです。
慢性疼痛治療ガイドラインでも、痛みだけでなく、睡眠障害、不安、抑うつ、生活動作の低下、社会活動への影響を評価する必要があるとされています。
慢性疼痛治療の目標は「痛みゼロ」だけではない
痛みを軽くすることは重要です。しかし、慢性疼痛の治療では、痛みの数字だけを目標にすると、治療がうまくいっているか分かりにくくなることがあります。
慢性疼痛治療ガイドラインでは、副作用をできるだけ少なくしながら痛みを管理し、生活の質や日常生活の動きを改善することが重要とされています。
例えば、次のような変化も治療効果です。
- 夜中に起きる回数が減った
- 食べられる物が増えた
- 会話中に痛みを忘れる時間が増えた
- 家事ができるようになった
- 外出を再開できた
- 痛みを確認する回数が減った
- 不安で検索し続ける時間が減った
ガイドラインでは、痛みの軽減より先に生活機能が改善することもあると説明されています。患者さんと医療者が、現実的な目標を共有することが大切です。
抗うつ薬を使用するときの注意点
自己判断で増減・中止しない
抗うつ薬は、急に中止すると体調が変化することがあります。効いた場合も、効かなかった場合も、自己判断で量を変えず、処方した医師と相談してください。
2021年研究の著者も、症状が落ち着いた後は、急にやめず慎重に減らす必要があるとしています。
効果だけでなく副作用も記録する
診察時には、次の項目を記録しておくと役立ちます。
- 痛みの強さ
- 痛む時間帯
- 食事中の変化
- 眠れるようになったか
- 吐き気
- 口の乾き
- 眠気やふらつき
- 便秘
- 体重の変化
- 性機能への影響
- 動悸などの体調変化
「痛みは少し良くなったが、口の乾きで食べづらい」といった場合には、薬の効果だけでなく、生活全体での利益と不利益を考えます。
ほかの薬との組み合わせを確認する
抗うつ薬やプレガバリンは、ほかの薬との組み合わせによって副作用が出やすくなる場合があります。
お薬手帳、市販薬、サプリメントを含め、使用しているものを医師に伝えてください。
受診の目安
何科に行けばよいですか?
最初は、口の中を詳しく診察できる歯科、歯科口腔外科、口腔内科などが適しています。
可能であれば、口腔顔面痛やBMSを診療している医療機関を探してください。必要に応じて、ペインクリニック、精神科、心療内科、内科などと連携します。
抗うつ薬を勧められたからといって、すぐに「精神科の病気」と判断されたわけではありません。慢性疼痛を複数の方向から治療するための提案である可能性があります。
早めの対面受診が必要な症状
次のような場合は、BMSだと自己判断せず、早めに対面で診察を受けてください。
- 口内炎や潰瘍が治らない
- 出血、しこり、強い腫れがある
- 発熱を伴う
- 痛みが急に強くなった
- 飲み込みにくい、息苦しい
- 食事や水分がとれない
- 薬を始めて強いふらつきや体調不良が出た
- 自分を傷つけたい気持ちが出た
見た目の変化、感染症、悪性疾患などを見逃さないことが重要です。慢性疼痛治療ガイドラインでも、診断時には重い病気を示す所見を除外する必要があるとされています。
オンライン診療が向いているケース
オンライン診療は、次のような場合に利用しやすい方法です。
- すでに口腔内の対面診察を受けている
- 明らかな傷や腫れがないと確認されている
- 血液検査など必要な検査が済んでいる
- 慢性的な症状の経過を相談したい
- 薬の効果や副作用を確認したい
- 遠方で専門医への通院が難しい
一方、初めて症状が出た場合、見た目の変化がある場合、急速に悪化している場合は、対面診察が優先されます。
当院での考え方
当院では、舌や口の痛みを「気のせい」として扱いません。
一方で、最初からトリンテリックスや特定の抗うつ薬を使うことを前提にするわけでもありません。まず、口の中の診察、症状の経過、これまでの検査、全身の病気、使用中の薬を確認します。
そのうえで、次の点を整理します。
- 主な症状は痛みか、乾きか、味覚の変化か
- 朝と夕方で差があるか
- 食事中に軽くなるか
- 眠れているか
- 不安で痛みを繰り返し確認していないか
- 食事、会話、仕事、外出にどの程度影響しているか
- 過去の薬でどのような副作用があったか
トリンテリックスが合う方もいれば、デュロキセチン、SSRI、三環系抗うつ薬など、別の選択肢が合う方もいます。抗うつ薬だけでは十分でない場合には、症状と安全性を確認しながら、別の仕組みの治療を検討することもあります。
大切なのは、薬の名前だけで治療を決めないことです。
痛みの数字、睡眠、食事、会話、活動量、副作用を定期的に確認し、「続ける」「量を調整する」「別の薬に変える」「薬以外の方法を組み合わせる」といった判断を患者さんと一緒に行います。
まとめ
- BMSはICD-11で慢性疼痛に位置づけられる
- 抗うつ薬は慢性疼痛の治療にも使われる
- トリンテリックスは早期反応が良好だった
- 52週後の反応率は他の抗うつ薬群と同程度
- 痛み、生活、副作用をまとめて評価する
バーニングマウスシンドロームでお悩みの方へ
舌や口の痛みは、周囲から見えにくい症状です。
検査で「異常なし」と言われても、食事のたびに痛い、夕方になるとつらい、夜も痛みが気になって眠れない状態が続けば、生活への負担は小さくありません。
抗うつ薬を勧められて戸惑うこともあると思います。しかし、抗うつ薬が提案されるのは、痛みを精神的な問題だけで説明しているからとは限りません。慢性疼痛として、痛みの感じ方を調整する目的で検討されることがあります。
トリンテリックスは有望な選択肢の一つですが、唯一の治療ではありません。これまで受けた検査、使用した薬、効果、副作用、睡眠や生活への影響を整理するところから始めてみてください。
初回相談では、すぐに薬を決めることよりも、「ほかの原因が残っていないか」「今、何が一番つらいのか」「どのような生活を取り戻したいのか」を確認することが大切です。
参考文献
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慢性疼痛治療ガイドライン作成ワーキンググループ編。
厚生労働行政推進調査事業費補助金・慢性の痛み政策研究事業監修。
真興交易医書出版部、2018年。




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