「異常なし」と言われたのに舌が痛い…
「歯科で診てもらったけれど異常はありませんと言われた」
「舌がヒリヒリするのに検査では原因が見つからない」
「ストレスのせいと言われたけれど、本当にそうなの?」
このような悩みを抱えて受診される方は少なくありません。
実際、舌痛症(バーニングマウス症候群)では、ストレスや不安を抱えている患者さんが多く、ストレスが強い患者さんほど痛みや口の乾きが強いことが報告されています。さらに、不安や抑うつなども含めて治療を行うことで、痛みが改善したという研究もあります。
もちろん、「ストレスが舌痛症の原因」と証明されたわけではありません。しかし、舌だけではなく、睡眠や生活、心身の状態も含めて考えることが大切だと考えられています。
よくある質問
ストレスと舌の痛みは関係ありますか?
関係がある可能性があります。ストレスが強い患者さんほど、痛みや口の乾きが強いという研究があります。
異常なしと言われたら気にしなくていいですか?
いいえ。検査で異常がなくても痛みが続く病気は存在します。
精神科に行くべきなのでしょうか?
必ずしもそうではありません。まずは舌痛症に詳しい歯科や口腔顔面痛を扱う医療機関への相談がおすすめです。
眠れないと悪化しますか?
睡眠不足や睡眠の質の低下は痛みを強く感じる一因になる可能性があります。
薬で改善することはありますか?
痛みの種類によっては抗うつ薬や抗不安薬などが選択肢になる場合があります。ただし、すべての患者さんに必要というわけではありません。
今回取り上げた研究
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象疾患 | 舌痛症(バーニングマウス症候群) |
| 対象人数 | 141人(関連研究)、150人(介入研究) |
| 研究デザイン | 観察研究、オープンラベル無作為化介入研究 |
| 主な結果 | ストレスが強い患者ほど痛みや口腔乾燥が強く、抗うつ薬治療で痛み・不安・抑うつが改善 |
| 限界 | ストレスが原因とは証明できない。介入研究はプラセボ群がない。 |
この記事の要点
- ストレスが強い患者さんほど痛みが強い傾向がある
- 口の乾きもストレスと関連する可能性がある
- 不安や睡眠も症状に関係することがある
- 心理面への治療で痛みが改善する患者さんもいる
- 舌だけではなく全身を含めた評価が重要
この記事はこんな方に向いています
- 舌がヒリヒリする
- 異常なしと言われた
- ストレスとの関係が気になる
- 口が乾く
- 不安や睡眠不足もある
舌痛症とは?
舌痛症(バーニングマウス症候群)は、見た目には異常がないにもかかわらず、舌や口の中にヒリヒリした痛みや灼熱感が続く病気です。
特に多い症状は
- 舌がヒリヒリする
- ピリピリする
- 辛いものがしみる
- 夕方になると悪化する
- 口が乾く感じがする
- 味がおかしく感じる
などです。
検査をしても口内炎やがんなどの病気が見つからないことも多く、「異常なし」と説明されることがあります。
しかし、「異常なし」と「痛みがない」は同じ意味ではありません。
現在では、神経の働きや脳での痛みの感じ方が関係する慢性的な痛みの一つと考えられています。
よくある誤解
異常なし=何も起きていない
そうではありません。
現在の検査では見つからないレベルの神経の働きや、痛みの調節の変化が関係している可能性があります。
ストレスだけの病気ではない
ストレスだけで説明できる病気ではありません。
神経の変化、ホルモン、睡眠、口の乾きなど、さまざまな要因が重なって症状が続くと考えられています。
一生治らない病気ではない
症状が改善する患者さんも少なくありません。
治療法はいくつかあり、自分に合った方法を見つけることが大切です。
研究で分かったこと
【論文で示された内容】
2023年に141人の舌痛症患者を対象に行われた研究では、ストレスを自覚している患者さんでは、
- 痛みのスコアが高い
- 口が乾く人が多い
- 唾液量が少ない
- 不安や抑うつのスコアが高い
- ストレスホルモン(コルチゾール)が高い
という結果でした。
具体的には、
- 口の乾きは67.6%(ストレスなし34.2%)
- 痛みスコア(VAS)は5.76点(ストレスなし4.82点)
でした。
つまり、
ストレスが強い患者さんほど、痛みや乾燥感も強い傾向があった
ということになります。
【この研究で分からないこと】
この研究は観察研究です。
そのため、
- ストレスが痛みを起こした
- 痛みがストレスを起こした
どちらなのかは分かりません。
あるいは、
痛みとストレスがお互いに悪循環を作っている可能性もあります。
そのため、
「ストレスが原因です」と断定することはできません。
ストレスを治療すると痛みは改善するのでしょうか?
ここで興味深い研究があります。
150人の舌痛症患者さんを対象に、複数の抗うつ薬を比較した介入研究では、
- 痛み
- 不安
- 抑うつ
がいずれも改善しました。
さらに、
治療開始から12か月で、多くの患者さんが痛みの改善を示しました。ボルチオキセチン(商品名;トリンテリックス)群では6か月時点で痛み・不安・抑うつのスコアが大きく改善し、12か月時点では臨床的寛解に達した患者さんも多くみられました。
ただし、この研究にも限界があります。
プラセボ(偽薬)を用いた二重盲検試験ではなく、医師も患者さんも服用薬を知っているオープンラベル試験でした。
そのため、
- 診療を継続して受けたこと
- 医師との信頼関係
- 病気について理解が深まったこと
なども改善に影響している可能性があります。
つまり、
「抗うつ薬なら必ず効く」と言える研究ではありません。
一方で、
心理面も含めた治療が有効な患者さんがいる可能性
は十分示された研究と言えるでしょう。
痛み・睡眠・不安はお互いに影響し合います
慢性的な痛みでは、
- 痛くて眠れない
- 眠れないので疲れる
- 疲れると痛みを強く感じる
- 不安になる
- さらに痛みが気になる
という悪循環が起こることがあります。
そのため、
舌だけを見るのではなく、
- 睡眠
- ストレス
- 不安
- 生活習慣
- お薬
まで一緒に確認することが大切です。
受診の目安
まず相談したい診療科
- 口腔外科
- 口腔内科
- 口腔顔面痛外来
- 舌痛症を診療している歯科
早めの受診が望ましい症状
- 数週間以上続く痛み
- 食事ができない
- 急激に悪化した
- 出血や潰瘍を伴う
- 体重減少がある
オンライン診療が向く方
- 検査で異常なしと言われた
- 症状が長く続いている
- 近くに専門医がいない
- 治療について相談したい
当院での考え方
舌痛症の患者さんでは、
「舌だけ診てもらって終わった」
という経験をされている方が少なくありません。
しかし実際には、
- 痛み
- 睡眠
- 不安
- ストレス
- お薬
- 全身の病気
などが重なって症状が続いていることがあります。
当院では、舌の症状だけではなく、生活背景や全身状態も含めて評価し、「今の痛みが続いている理由」を一緒に整理することを大切にしています。
薬が必要な方もいれば、生活習慣や睡眠の見直しだけで改善する方もいます。
一人ひとりに合わせた診療を心がけています。
まとめ
- 舌痛症ではストレスが強い患者さんが多い
- ストレスが強いほど痛みや口の乾きも強い傾向がある
- 不安や睡眠も症状に関係する可能性がある
- 心理面への治療で改善する患者さんもいる
- 舌だけではなく全身を含めて考えることが大切
舌のヒリヒリでお悩みの方へ
「異常なし」と言われても、痛みが続くことは珍しくありません。
検査結果だけでは説明できない慢性的な痛みもあります。
一人で悩まず、「なぜ痛みが続いているのか」を一緒に整理することから始めてみませんか。
当院では初回相談を通して、現在の症状やこれまでの経過を丁寧に伺い、今後の選択肢について一緒に考えています。
参考文献
- Lee YH, Suk C.
Effects of self-perceived psychological stress on clinical symptoms, cortisol, and cortisol/ACTH ratio in patients with burning mouth syndrome.
BMC Oral Health. 2023.
DOI: 10.1186/s12903-023-03235-0 - Adamo D, Pecoraro G, Coppola N, et al.
Vortioxetine versus other antidepressants in the treatment of burning mouth syndrome: An open-label randomized trial.
Oral Diseases. 2021.
DOI: 10.1111/odi.13602 - 慢性疼痛診療ガイドライン(最新版)




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