舌痛症

舌の痛みで眠れない夜に起きている『破局的思考』とは|舌痛症担当の歯科医師が解説

舌が痛くて眠れない?

夜寝る前になると、舌がヒリヒリと焼けるように痛んだり、ピリピリと痺れる感じが気になることで寝付きにくいという方は少なくありません。舌痛症と呼ばれる疾患の患者様の多くの方が、舌の症状で不眠の傾向にあると訴えます。

舌痛症とは以下のような疾患です。

舌痛症と診断される基準
・口の中に、焼けるような痛みや不快感がある
・1日2時間以上症状があり、毎日繰り返す
・3ヶ月を超えて続いている
・痛みは口の粘膜の表面に感じる
・粘膜には見た目上明らかな異常がない
・痛みの原因になる他の病気(傷・できもの・全身の病気など)が、検査で見つからない
・他の病気としてうまく説明できない

症状が出始めてから3ヶ月以内でも、舌痛症を疑い治療対象となる。

診断される基準をご覧いただければ想像できるかと思いますが、舌痛症は見た目に症状がなく、自分しかその症状を感じていないため分かりにくく、他人に理解されにくい疾患でもあります。

患者様の中の多くの方が、夜寝る前に症状が現れると訴えます。そのため睡眠に影響すると考えられます。実際のところ、痛みと睡眠の関係は舌痛症を含む慢性的な痛み全般で研究が進んでいます。

痛みと睡眠の関係と破局的思考

2023年に公表された、スウェーデンの研究結果(参考文献は下部参照)を元に、睡眠と痛みの関連について解説させていただきます。この研究結果をもとに、不眠と痛みがどちらも症状としてあることは決して珍しくはないということ、その間にある破局的思考というものについての解説をお伝えしたいと思います。

痛みと不眠の関係

上記の研究では、がん以外の慢性疼痛の患者様6,497人のデータをもとに、不眠が痛みの強さにどうつながっているのかを調査しました。舌痛症も現在慢性疼痛という、3か月以上続いたり、繰り返したりする痛みとして分類されています。

この調査からは、患者様のうち62.3%の方に不眠が見られたと報告されました。つまり半数以上の方で痛みと不眠の両方が見られたということで、二つの症状があることを珍しいとは言えないことが分かりました。なお、この調査では時系列で患者様を追跡していないため、痛みがあるから眠れなくなったか、それとも眠れないから痛みが出たのかまでは明らかにされていません。

まず患者様にお伝えしたいのは、その痛みも不眠も気のせいでは決してなく、きちんと存在するもので、治療の対象になるということです。

もう治らないかもしれないという思い

痛みを悪い方へ悪い方へと考えてしまうことを、破局的思考といいます。痛みが毎日続くと、治らないかもしれない、このまま痛みが続くかもしれないと考えがよりマイナスの方向に固定されていきます。この破局的思考が不眠と痛みを結びつけている可能性があると、上の調査では指摘されています。

この破局的思考も、気の持ちようではなく、症状に対する自然な反応です。そのためこの反応も治療の対象となります。

不眠をともなう舌痛症の治療

お薬による治療

痛みと不眠症には関連があると解説しました。この時、痛みだけでなく不眠もお薬で改善させることが可能です。舌痛症そのものの治療だけでなく不眠の治療は、寝付けないときの悪い考え、破局的思考により痛みが続く、あるいは悪化するという悪循環を和らげることにつながる可能性があります。また睡眠が改善することで、生活が体感として楽になる可能性もあります。この時、不眠の治療は医師が専門ですので、口の中そのものが専門の歯科医師だけでなく医師と連携して治療することで、治療の選択肢が広くなることもあります。

カウンセリングの重要性

破局的思考を止めることは、止めるようにお伝えしてもなかなかできることではありません。カウンセリングでは、まず患者様の破局的思考がどういうものか、歯科医師と一緒に話し合って言葉で患者様自身が説明できるようになっていただきます。こうすることで考えそのものが破局的思考であると患者様が理解できるようになり、痛みにともなって出てきた考えだと認識できるようになります。このようにその思考を「症状」と捉えていただきます。

認知行動療法の考え方をもとに考え方の癖に気づいていただくこともカウンセリング内容の一部です。

舌痛症治療の基本的な考え方「全人的医療」

舌痛症では痛みだけに焦点を当てた治療では不十分です。気分の落ち込みはないか。眠れているか。食事は取れているか。仕事はできているか。できなくなった好きだったことはないか。そういった生活を形作るものすべてに焦点を当て、改善を図りながら痛みの治療を行っていきます。これを全人的医療と呼びます。舌痛症には全人的医療が必要不可欠であると小林オーラルクリニックは考えています。

当院では初回無料オンライン相談を実施しています。一緒に整理してみたいこと、知りたいことなどがありましたら、一度オンライン相談でお話ししてください。

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眠れないだけではなく、不安感や気分の落ち込みも多くの人にみられ、治療の対象になります。詳細は下のコラムに記載しています。

舌のヒリヒリに不安や心配、気分の落ち込みを感じていませんか?歯科医師が解説

参考文献

1. Gerdle B, Dragioti E, Rivano Fischer M, Dong HJ, Ringqvist Å. Catastrophizing and acceptance are mediators between insomnia and pain intensity―an SQRP study of more than 6,400 patients with non-malignant chronic pain conditions. Front Pain Res. 2023;4:1244606. doi:10.3389/fpain.2023.1244606

2. El-Rubaiy M, List T, Truedsson A, Goulet JP, Svensson P, Alstergren P. Optimized and validated clinical diagnostic criteria for burning mouth syndrome. Cephalalgia. 2026;46(6):1–12. doi:10.1177/03331024261455835

3. Treede RD, Rief W, Barke A, et al. A classification of chronic pain for ICD-11. Pain. 2015;156(6):1003–1007. doi:10.1097/j.pain.0000000000000160

4. Scholz J, Finnerup NB, Attal N, et al. The IASP classification of chronic pain for ICD-11: chronic neuropathic pain. Pain. 2019;160(1):53–59. doi:10.1097/j.pain.0000000000001365

5. Finnerup NB, Haroutounian S, Baron R, et al. Neuropathic pain clinical trials: factors associated with decreases in estimated drug efficacy. Pain. 2018;159(11):2339–2346. doi:10.1097/j.pain.0000000000001340

6. 慢性疼痛治療ガイドライン作成ワーキンググループ 編. 慢性疼痛治療ガイドライン. 厚生労働行政推進調査事業費補助金 慢性の痛み政策研究事業「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班 監修. 真興交易医書出版部; 2018.

小林 隆洋

小林 隆洋

長崎大学歯学部卒業。歯科医師。 舌痛症・口腔乾燥症を専門とするオンライン歯科診療に従事しています。 慢性疼痛、口腔心身症、睡眠医学を中心に国内外の医学論文を継続的にレビューし、エビデンスに基づいた医療情報をわかりやすく発信しています。

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